運命の人はお義兄様
葛藤する静夏を間近で見ると
俺も胸が苦しくなった…。
あの曲を弾いている静夏から目が離せなかった。
目を離してしまったら…
どこか遠くへ、行ってしまいそうだった。
し…ず、か…。
心の中でも愛しい人の名前を呼ぶ。
さらに胸の奥が苦しくなった気がした…。
俺は曲が終わると同時に静夏を抱きしめてしまった…。
そんな俺に静夏は
「こうくん??」と呟いた…。
その口からまた名前が呼ばれるなんて想いもしていなかった…。
静夏がゆっくり此方を向いているのがわかった。
目があった瞬間―――‥。
俺の希望は打ち砕かれた…。
静夏は驚いたように俺の名前を呼んだ。
静夏は思い出していなかった…
「ごめん…」
その言葉しか出てこなかった。
俺は急いで美希さんの家から出た――‥。