運命の人はお義兄様


葛藤する静夏を間近で見ると
俺も胸が苦しくなった…。


あの曲を弾いている静夏から目が離せなかった。

目を離してしまったら…
どこか遠くへ、行ってしまいそうだった。


し…ず、か…。

心の中でも愛しい人の名前を呼ぶ。
さらに胸の奥が苦しくなった気がした…。


俺は曲が終わると同時に静夏を抱きしめてしまった…。


そんな俺に静夏は
「こうくん??」と呟いた…。

その口からまた名前が呼ばれるなんて想いもしていなかった…。

静夏がゆっくり此方を向いているのがわかった。

目があった瞬間―――‥。

俺の希望は打ち砕かれた…。


静夏は驚いたように俺の名前を呼んだ。
静夏は思い出していなかった…
「ごめん…」

その言葉しか出てこなかった。


俺は急いで美希さんの家から出た――‥。





< 84 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop