愛しき悪魔








…後悔した。





彼の顔は苦しそうに歪み、唇を噛んでいる。




…泣きそうだった。





「…ッ。見んなよ。」




腕で顔を隠す。




「…えっ?…アッ…ごめんなさい。」




悪魔は泣くの?




衝撃だった。




悪魔は非道な生き物ではないの?



感情なんて持たない生き物じゃないの…?




「…アッ…あの、泣かせてしまったなら…ごめんなさい。」




「…泣いてないから。それにお前のせいじゃないから。」




向き直った顔は恐怖さえ覚える冷たい顔。




悪魔なんだと実感する。




「あの、ここはどこですか?」




「俺の家。」




「い…家?ここは人間界じゃあないの…?」




「…ここは悪魔の世界だ。」




ドクンッ…バクバク…




心臓が激しくなる。





悪魔の世界?
ここが?




「あのっ、私はどうしてここに?」




「落ちてたから拾った。」




落ちてた?



記憶をたどる。

人間界に行こうと飛んで…アッ、優愛を助けようと…あのまま気流に流されて…。





私は悪魔の世界にながされてきたの?




父が悪魔の世界と人間界は繋がっていると言っていたことを思い出す。





私はやっぱり…。




目の前が真っ暗になった。





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