ビターに愛して シュガーな恋心
考え方が違うのかな?

それとも用事があったのかな?

「あ! そうだ、申し遅れました
私は小山内 莉子(おさない りこ)って申します」

「小山内? …って小山内 勇人の?」

「はいっ! 兄様を知っているのですね
これから兄様のところに行くんですけど、駅から学校までの道がわからなくて…
学院内の地図なら、頭に入れてきたんですけど」

なんだ

この男の人、兄様を知ってるんだ

良かった!

「んで、学校まで送ればいいのか?」

「はいっ! ありがとうございます」

私はにっこりとほほ笑んだ

「礼は?」

「え?」

「送った礼だよ
何も無しってわけ?」

「あ…そうですよね」

どうしよう

お金なんて、電車賃くらいしか持ってこなかったし

お礼になりそうな物品を持っているわけでもないのに

兄様にお金を借りようかな?

「今、手持ちのお金は少ないんです
兄様に借りますので、研究棟までお付き合いできますか?」

「金なんていらないよ
あんたの体を頂戴」

「私の?
差し上げられるモノなんて何もないですけど……困りました
どうしましょう
貴方様のつけている髪飾りのような素晴らしいものを身につけているわけでもありませんし
アクセサリーを持っているわけでもありません
鞄の中に入っているのは、着替え一式くらいですし…」

「そういう意味じゃないんだけど?」

「ではどういう意味でしょうか?」

他に何かあるのかしら?

男の人は、にこって笑うと私に背を向けて歩き出した

「んじゃ、送りますよ」


< 12 / 417 >

この作品をシェア

pagetop