ビターに愛して シュガーな恋心
「ほら、ここが紫桜学院だよ」

学院の門の前で、男の人が足を止めた

「あ、ここですかぁ」

大きい学校だなぁ

私が春まで通っていた女子中とは全然違うね

ここに兄様がいるんだ

今は大学生として、兄様はこの学校に通っているよね

「んで、お礼の件なんだけど」

「あ、そうですよね
どうすればいいのでしょうか?」

私が首を傾げると、男の人が体の向きを回転させた

「じゃあ、セ……」

「莉子っ!」

男の人の背後から、大きな声で私の名前を呼ばれた

「あ、兄様」

黒髪を汗で濡らして、兄様が走ってきてくれた

ずれた眼鏡の位置を、中指一本で押し上げると、兄様が深呼吸をした

「よくここまで来れたな」

兄様が私の頭を撫でた

「この方に、送ってもらったのです
兄様と同じ制服だったので」

男の人の顔を見て、私はほほ笑んだ

「同じ制服って……2年前の話だろ」

「はい。でも私はその制服しか知りませんから」

「悪かったな
帰るところ……って藤城か?」

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