ビターに愛して シュガーな恋心
勇人さんは机に背を向けた座っていた

回転椅子を窓に向けて、まるで精神統一をしているかのようにじっと動かず、外を眺めていた

「勇人さん…?」

あたしの声に、勇人さんの肩がびくっと反応した

でも動こうとはせず、視線は青い空を見つめている

何を考えているの?

「8年前、俺は恋をした
クレアという女性に……とても寂しい目をした大人の女性だった
九条 クレア」

『九条』って…克波君の親戚?

「克波の母親だ
俺の一方的な片想いでしかない…と思う

彼女は大人だったから
未来が予測できていた

俺はクレアにどうしても振り向いて欲しくて、いろいろ手をつくした
それが…彼女の死に引き金を引いた

九条克海の怒りを買ったんだ
克海の嫉妬から、クレアは殺された

俺が…この気持ちを隠し、克波の母として接していたなら…今も彼女は生きていただろう
だから俺は…心に誓った

克波と克波が大切に思う人間は必ず守る…と」

勇人さんは耳たぶについている二つのピアスを、人差し指で触った

視線は外に向いている

どこを見ているのかわからない

視点が定まっていない目だった
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