ビターに愛して シュガーな恋心
「桃香…俺は桃香みたいに、優しい人間じゃない
純粋に、素直に物事をとらえられる人間でもない
嫌いなら、嫌いだとはっきり言ってくれ」

あたしは、また首を横に振った

嫌いなわけ…ない

勇人さんが好き

でもあたしは…汚れてる

誰にも必要とされてない

勇人さんが席を立つと、あたしの前まで歩いてきた

そっと肩を抱きしめる

あたしの頬が、勇人さんの胸にぐっと押しつけられた

「今なら…まだ間に合うんだぞ?
嫌なら、桃香の両手で俺の胸を押せ
俺が…桃香を離せなくなる前に、抵抗してくれ…頼むから」

勇人さんが苦しそうに、あたしの耳元で囁いた

勇人さんの息が熱い

本当に勇人さんはあたしでいいの?

あたしの過去を知ってるよね?

それでも、あたしがいいって言ってくれるの?

「あたし…勇人さんが、いい」

あたしは勇人さんの背中に手をまわして、抱きついた

勇人さんの広い胸から、心臓の音が聞こえる

とても早くて…でも心地よい響きだった


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