ビターに愛して シュガーな恋心
勇人さんのお父さんは、携帯から目を離すこともなくブツブツと独り言をつぶやいていた

えっと…これってあたしに話しているわけじゃないのかな?

ただの独り言?

対応に困るだんけど…なあ

「もう8年だぞ?
忘れてもいいだろうに」

またぼそっと呟いている

8年?

8年前に何かあったのかな?

勇人さんは、勇人さん自身の過去は一切口にしないから、わからないよ

『何があったんですか?』なんてメイドの私が質問するのは失礼だろうし

ぼそぼそ話されると、すごく気になっちゃうから

心の中で呟いてほしいな

「あの…飲み物は何を?」

「ああ、ではコーヒーを」

「はい」

あたしはアイスコーヒーを冷蔵庫から出して、コップに注いだ

確か、前に一度
勇人さんから聞いたことがあった気がするんだよね

お父さんは、猫舌で熱いものは苦手だって

あたしはおぼんにコップを乗せると、お父さんに持って行った

「コーヒーと頼んで、アイスコーヒーを持って来たのか?」

勇人さんのお父さんが、コップを見ると質問した

「え? あ…ホットがいいならすぐに…」

「いや…私は熱いのが苦手なんだ
初対面なのに、君は凄い
私は君を気に入ったよ」

勇人さんのお父さんがほほ笑んでくれた

嬉しい…かも

誰かに褒められるなんて、早々ないから

すごく嬉しい


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