ビターに愛して シュガーな恋心
あたしたちは小走りで、エレベータに乗り込む

沈黙が続き、何も話さずにエレベータは勇人さんの部屋のある階数で止まった

扉が開くと、あたしたちは静かに廊下を進んだ

「莉子、藤城は帰ったのか?」

「うん、久我さんって人と一緒に」

「…だろうな」

勇人さんが納得したように頷いた

「え?」

莉子ちゃんが足を止めて、顔をあげる

勇人さんも振り返ると、歩くのをやめて莉子ちゃんの顔を見る

「あいつの顔の傷を見た
相当悔しかったんだろ?
武術をたしなんでいないような男に負けたのが
たしか傘を持っていたな?
素手で負けたのなら、あそこまで悔しがらなかっただろうが…
傘とは言え、武器を持っていたのにあいつは負けた
産まれたときから、剣道家になるように育てられてきたあいつは…傘を竹刀かわりに使って敗北した
かなり、プライドが傷ついたんじゃないのか?」

藤城君って、剣道家の息子だったんだ

藤城君って自分の話をしないから…あたしも知らなかったなぁ

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