ビターに愛して シュガーな恋心
「桃香?」

勇人さんがあたしの顔を見る

家の鍵を手に持ったまま、ドアの前で勇人さんの動きが停止した

「どうして、父親のことを言ってくれなかったんですか?
父は、勇人さんや藤城君に何をしたんですか?
なんで、あたしに隠していたんですか?
あたしに言う必要のないことでした?」

「ああ、言う必要のないことだ」

どうして?

なんで話してくれないの?

『お前さえいなければ』

パパの声が蘇る

「そう…ですか
ではあたしは必要のない人間なんですね」

勇人さんの眉間にしわが寄った

「なんで、そうなる?」

「あたしがどんなに不安だったか…
どんなに苦しかったか…勇人さんは理解してません」

「くだらねえな
桃香の父親とはビジネスをしただけだ
この2年間
俺は一度たりとも、ビジネスの話を桃香にはしてねえだろ
今回だって同じだ」

勇人さんは家の鍵を使って、玄関のドアを開けた

今回は、あたしのパパが絡んでいたんだよ?

それにビジネスって…誰から金を巻き上げたの?

商談を成立するような件だった?

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