ビターに愛して シュガーな恋心
「勇人さんは怪我をし、藤城君も……
あたしの父親のせいで、数多くの人を巻き込みました
それでも話してくれないんですか?」

「ああ、俺は話す気はねえよ」

「…わかりました」

あたしは靴を脱ぐと、自分の部屋に入って鍵を閉めた

せっかく貴美恵さんが、用意してくれたドレス…無意味だったみたい

勇人さんにとって、あたしは都合の良い女でしかないんだ、きっと

抱きたいときに、都合よく抱ける女

お腹が減ったときに、食事を作ってくれる女

部屋の掃除をしてくれる女

どうして、話してくれないの?

話してくれないってことは、あたしは勇人さんに信用されてないってことでしょ?

話す必要がないって

あたしには、話す価値もないってことでしょ?

あたしはドレスを脱ぐと、チュニックとジーンズに着替えた

貴美恵さんがくれたクレンジングシートで、化粧を落とすと鏡に映った自分の顔を見つめた

「最低だ…あたし」

勝手に勇人さんの恋人になれたと思って、浮かれてた

馬鹿みたいに、笑ってた

でも勇人さんは違った

全然、違ったんだ
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