ビターに愛して シュガーな恋心
「おいっ、莉子! 桃香はそっちに来たか?」

ドアの向こうから、兄様の声が聞こえてきた

ノックもなしに、兄様は失礼だわ

せっかく楽しい妄想をしていたのに…兄様の声で台なしよ!

「お姉さんなら、この部屋にいます
私とおしゃべりを楽しんでいるの」

桃香お姉さんが、兄様の声にびくっと反応して立ち上がろうとした

私は、桃香お姉さんの腕を掴んで首を振った

「行かなくていいの!」

「え? でも…」

「兄様があんな風に低い声を出すなんて、面白いわ」

「えっ?」

「楽しくない?」

「た…のしい、とは思わない…かな?」

桃香お姉さんが、苦笑した

うーん、残念!

兄様は、家族にはクールフェイスなのよ

本心を表に出さずに、家族愛がある男性を振舞うの

まあ、それなりに愛情があって優しくしてくださっているけれど

私を怒ったこともないし、イライラしていてもそれを隠すのよね

演じるのがうまいのよ

小山内家の長男…でもないのか

疾風兄様がいるから、小山内家としては次男?

詳しいことは面倒くさいから置いておいて

小山内家の後継者として、恥じない行動の取り方を心得ているのよね

だから、私の前にいる兄様はつまらないの

人間味がないっていうか

薄味っていうのか

人間臭さがなくて、物足りない


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