ビターに愛して シュガーな恋心
『くだらねえっ!』

勇人さんの怒鳴り声が聞こえてきた

久々に勇人さんの不機嫌な態度を目にした

それだけ莉子ちゃんを大切に想っているんだね

「莉子ちゃん…」

「だって…悪者にしたくなくなっちゃったんだもの」

莉子ちゃんの頬から、涙がこぼれた

「悪者?」

「藤城君のこと
兄様の悔しい顔が見たいって言ってたから…桃香さんを使って何かしようとしているってわかったから
桃香さんが傷つくより、私が傷ついたほうが軽いって
傷つくのがわかってて、傷つくなら
傷口は大きくならないでしょ?」

あたしは莉子ちゃんの肩を抱いた

「わかっていても、傷つくときは…深く傷つくものじゃない?
勇人さん、莉子ちゃんの携帯が繋がらないってわかってから凄く心配してたよ」

「私は汚れているから…何をされても、もう汚れようがないから
桃香さんは違うでしょ?
兄様との未来がある」

莉子ちゃん、もしかしてあたしが藤城君に無理やり抱かれると思って、身代りに?

「違うわ
あたし…勇人さんとは何でもない
ただ面倒を見てくれてるだけなの
行くあてがないから、メイドとして雇っているだけ」

「兄様は、桃香さんを好きだよ?」

「どうかな?
あたしも汚れてるから」

「え?」

「たぶん、莉子ちゃんが思っているような女じゃないよ、あたし…
いろいろあったから」

「でも…」

「莉子ちゃん、藤城君のことはあたしは平気だよ
藤城君はあたしを抱こうなんて思ってないから」

あたしは莉子ちゃんの背中を撫でると、体を離してにっこりとほほ笑んだ
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