ビターに愛して シュガーな恋心
「莉子を叩くつもりはなかった
藤城に抱かれたのかと思ったら、頭に血が上った
しかも、身代りとか言いやがって
そんなの…嬉しくもなんともねえ
身代りになるくらいなら、さっさと俺に報告すりゃいいんだよ

藤城に恨まれてるってどうせ気づいているなら
変な気を回すなって言いてえんだ」

「藤城君と何かあったの?」

「昔のことだ
あいつの想い人を殺した」

「え? 殺した?」

「父親が悪徳商法まがいの商売をしてた
だがら、成敗してやった…つもりだった
けど、世間からはみ出たその一家は心中した
その一家の娘が、当時、藤城の恋人だった
中学生の淡い恋だと思ってたが、意外と根が深かった
髪留めに、その女の赤いリボンをつけているのを見た時ははっとしたよ」

勇人さんが苦笑した

いつもの自信たっぷりな笑みは消えている

悲しくて、つらいと体で訴えている

勇人さんだって人間だもの

いつも前向きで、堂々としているわけじゃないんだね


「何かを成し遂げるには、必ず代償がある
誰かを助けたつもりでも、違う場所が知らない誰かが傷ついている
そう気付かされた
だが、俺は間違った選択はしてねえ
影に隠れるつもりもねえ
だから莉子が気にして、苦しむ必要はねえんだよ」

勇人さんが苦しそうに拳をつくった

自分の太ももを叩いて、苛立ちを隠そうとした
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