ビターに愛して シュガーな恋心
勇人さんの唇が、古傷の痕をなぞっている

嫌だっ…勇人さんに傷を見られた

あたしは身体を縮めると、前髪を必死に下におろした

「桃香?」

お父さんにつけられた傷

消えない傷を…勇人さんに見られた

絶対に、嫌われる

「駄目です
額だけは…ダメです」

あたしの声が震える

勇人さんの手があたしの身体から離れた

「嫌なら、俺の部屋で寝ろ
じゃなきゃ、もっとひどいことをする」

あたしは走って勇人さんの部屋に向かった

勇人さんの視線を感じる

もしかして…傷のこと

勇人さんは知っていたのだろうか?

あたしが額の傷を隠しているのを、わかっていたの?

さっきの様子だと

傷を見ても、全然驚いてなかった

そこにあるのを知ってて、前髪を掻きあげた?

あたしは勇人さんの部屋に入ると、ドアの前にしゃがみこんだ

心臓の音が早い

ドキドキと、体中に響いている

落ち着かなくちゃ!
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