ビターに愛して シュガーな恋心
あたしは、音をたてないように自分の部屋に行くと髪の毛を結った

いつものように二つに分け、前髪をななめにたらして額の傷を隠した

この傷は一生残るんだろうなぁ

あたしは、髪の上から傷口を触った

もう痛みも感じない、傷跡

あのときはたくさん血が噴き出して、死んでしまうかと思った

パパのせいで、人生を終わりにされるかと恐怖を感じた

でも生きている

あたしは生きている

すごいハッピーでバラ色な人生とは言えないけど

ささやかな幸福に包まれている

高校を卒業したら、どうしよう

勇人さんは大学の費用まで、面倒を見てくれるって言ってくれた

だけど、高校と大学の学費だけでも、相当な額になっていると思う

それを勇人さんが稼いだお金で、通わせてくれるのは悪い気がする

あたしは、勇人さんに何も返せてない

お金を稼ぐツテなんて全くないし

バイトとしたって多寡が知れている

到底、全学費の金額には届かない

クッキーを焼いてくれれば…とか

ケーキを焼いてくれれば…とか

そういう要求でイーブンにしようとしてくれてる勇人さんに申し訳ない

だって対等な提供だと思えない


< 99 / 417 >

この作品をシェア

pagetop