Be impatient
彼のその行動は自分に自信があるからなのか、それともやんわりと断わられたぐらいじゃ分からないぐらい鈍いのか。

どちらにしろ、性質が悪い。

敏感だとは言えないがそれほど鈍くはない私は、ワタナベさんの気持ちに気付いてはいる。

でも私がワタナベさんの気持ちに応える事は、きっと無い。

いくら格好良くても、性格が良くても、人気がある人だとしても。

私の心臓がドキドキと煩くなる様な人でないと、付き合う事は決してしない。

ワタナベさんを前にして私の心臓が煩く騒ぎ立てる事は、全く無い。

私の中で『お試し』なんて軽い気持ちで付き合ったり、そんな事は有り得ない事だ。

…ヤナギさんはどんな考えの持ち主なんだろう。

恋愛に対して…

「ハラダさん。コーヒーありがとう。」

ワタナベさんは素敵な笑顔で私に言うと、給湯室から出て行った。

その後姿をぼんやり見つめながら、私はヤナギさんの事を考えていた。

『お試し』で付き合っちゃうような人なんだろうか。

『なんとなく』で彼女を作っちゃうような人なんだろうか。



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