Be impatient
「ハラダさん。」

この声さえも私にはとても甘い。

突然左肩越しに名前を呼ばれ、私は体をビクっとさせた。

ただ名前を呼ばれたからじゃない。

それだけだったら、こんなにも驚いたりしない。

ヤナギさんは私の左肩、と言うよりも、左耳のすぐ近くで私の名を呼んだ。

「はい。」

ドキドキと脈打つ音が聞こえるんじゃないのかって思う。

「ここ。」

ヤナギさんは私の後ろから身を乗り出し、右手で私の前の画面を指す。

ヤナギさんの指した所に目を向けた私に、

「間違ってる。」

それだけ言うとすっと離れて行った。

「す、すみません。」



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