恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「よっ。三日坊主にならずにちゃんと真面目に働いてっか?」
振り向くとそこに、糸のついた色とりどりの風船を手にした3頭身のピンク色した着ぐるみのウサちゃんがいた。
「あったり前でしょ♪ あたし、辞めないって宣言したしぃ♪ ……ってか仕事のジャマしないで」
「ちゃんとやってるか心配して見にきてやったのに、あんだよ、その態度」
「あーもぅ、そんなデッカイ頭して入り口に突っ立ってないでよ。お客さんがお店に入ってこれないでしょ」
「悪りぃ、悪りぃ」
そう言ってウサちゃんの着ぐるみが、アタマを脱いでしまうと、その下から無精ひげをはやした赤いバンダナの24歳の男のヒト――つまり、おにーちゃんの素顔が現れた。
「ちょっ、ちょっと子供が見てるよっ」
めちゃめちゃ慌てているあたし。
オープンカフェの向こうのテーブルのほうから、幼稚園くらいの女のコがポカーンとクチを開けてコッチのほうを見ている。
「わ、悪りぃ、うっかりしてたっ……」