恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「もぅ、子供の夢こわさないでよ」

自分のしでかした暴挙に気づいて、慌ててウサちゃんのアタマをかぶりなおすおにーちゃんに、すっかり呆れ果ててしまうあたし。



「あ、赤井先生っ……!?」



……と、そのとき、元通りに戻ったウサちゃんの着ぐるみの後ろから、聞き慣れた女のコの声が聞こえてきた。


同じ中学に通ってた碧(みどり)だった。

中学卒業後、あたしは工業高校、彼女は進学校とそれぞれ進路は別れてしまったけど、高校生になってからもしょっちゅうメールはしてたし、お互いの都合が合うときには、一緒に遊びに行ったりもしていた。


「桃がカフェでバイトはじめたってゆうから、友達つれて冷やかしに来てみたんだけどさ……そのウサギの中のヒトって、前にあたしらの中学に教育実習に来た赤井先生だよね?」

「……って、お前、たった2週間しか学校にいなかったオレのこと、まだ覚えててくれてたのか? なんか、感動するなァ♪」

ウサちゃんの着ぐるみの中で、ニヤけているおにーちゃんの顔が目に見えるようだった。

「だって先生、女子にすっごく人気あったんだから」
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