恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「そんじゃ、オレ、自分の仕事に戻るわ。オレも仕事がんばるから、ピンクもバイトがんばれよな。……あと、恋もがんばれ」

そう言って、右手の親指を立ててグッと前に出すおにーちゃん……いやウサちゃん。

「い、いーからもぅ、さっさとどっか行ってよっ。もうジャマ、ジャマっ」

破れかぶれになったあたしは力いっぱい両手を突き出し、足を踏み出して、ようやくウサちゃんをお店の外へと追い出した。


「……ったく、ヒトの気も知らないで……」


あたしは小声でつぶやいた。

「ん? なんか言った?」

碧がヘンな顔をして訊いてくる。

「なんでもない、なんでもない♪ “ヘンなの”がいたせいでスッカリ話が長くなっちゃったね♪ さぁさ、こちらへどうぞ~♪」


営業スマイルで空いてるテーブルへと碧たちを案内すると、手馴れた手つきで彼女たちにメニューを配るあたし。

「ありがと。桃、その制服、意外と似合ってんじゃん」

「“意外と”は余計だ、っつーの」

お笑いコンビのツッコミのように裏拳で碧の二の腕を叩くあたし。
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