恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
頭に血がのぼって、泣きそうになりながらあたしが言う。

「最初っからダメだと思ってるからカラダが動かねぇんだ。まずはイメージしてみろってんだ、クルッて逆上がりをしている自分自身の姿ってヤツをよ」

「今まで1回もできたことないのに、そんなのイメージできるわけないじゃんっ」

「じゃあ、今から俺が教えてやる。お前はその感覚をカラダで覚えろ」

そう言うとおにーちゃんは、逆上がりの途中の体勢でジタバタもがいているあたしの下に入り込んで、ちょうど背中合わせのカタチであたしのカラダを下から支えてくれた。

その瞬間、ピッタリくっついた背中から、いつものおにーちゃんの匂いがした。


「お、おにーちゃん、恥ずかしいよぅ……」

公園で遊んでる他の子供たちの視線を一身に浴びて本当に死ぬほど恥ずかしかった。

「なに恥ずかしがってやがる? 逆上がりができなくて、クラスの笑い者にされるほうがよっぽど恥ずかしいんじゃねぇのか?」

「だってぇ……」


たしかにおにーちゃんの言うとおりだけど、乱暴に扱えばたちまち散ってしまう白いタンポポの綿毛のようにデリケートな乙女心ってヤツを少しは分かってほしいと思った。


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