恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

「うん、でもねぇ、実際、若い頃には若い頃なりの悩みってヤツがあるんだよ、これが」

「そうさねぇ、浜の真砂(まさご)は尽きるとも、世にオンナの悩みが尽きることはねぇ、ってことだねぇ」

「そーいうこと、そーいうこと♪ じゃ、ごゆっくり~♪」



「おかえり、桃香」



桔梗姐さんとの会話を終えたばかりのあたしに声をかけてきたのは母だった。

あたしは「ただいま」と返事をする代わりに……、


「かーさん、あたし、もう高校辞めようかと思ってるんだ」


……と答えた。

「帰ってくる早々なにを言い出すんだい?」

「だって学校、全然面白くないし……」

「だからあれほど言ったじゃないか、アンタにゃ工業は向いてないって」

母の言い方が“それ見たことか!”って感じだった。

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