恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「いつものように店でおせんべい焼いてたら突然倒れて、一時は大騒ぎだったんだよ。病院の先生の話じゃ、ガンの再発らしいよ」
「治ったんじゃ……なかったんだ……」
おにーちゃんの父親は、去年も仕事中に突然倒れて即入院になったことがある。
そのとき胃ガンの摘出手術は成功していたはずなんだけど、それが今日になって、また倒れて入院したってことは、ガンがまた別の箇所に転移したってことなんだろうと思う。
「おやっさんもかわいそうなこった。担当の先生の話じゃ、何度もうわごとでヒデ坊の名前を呼んでたそうだ」
「あたし、おにーちゃんに電話してみるっ」
学生カバンを床にほっ放り出して、ケータイのリダイヤルボタンをプッシュするあたし。
だけど……、
だけど仕事中なのか、それとも無視してるだけなのか、いくらコールしても電話はいっこうにつながらない。
「あたし、行くからっ」
「行くって、どこに?」
「決まってんじゃん、おにーちゃんのとこだよっ。行って、首に縄つけてでも、おやっさんの前に連れてきてやるんだからっ」
「治ったんじゃ……なかったんだ……」
おにーちゃんの父親は、去年も仕事中に突然倒れて即入院になったことがある。
そのとき胃ガンの摘出手術は成功していたはずなんだけど、それが今日になって、また倒れて入院したってことは、ガンがまた別の箇所に転移したってことなんだろうと思う。
「おやっさんもかわいそうなこった。担当の先生の話じゃ、何度もうわごとでヒデ坊の名前を呼んでたそうだ」
「あたし、おにーちゃんに電話してみるっ」
学生カバンを床にほっ放り出して、ケータイのリダイヤルボタンをプッシュするあたし。
だけど……、
だけど仕事中なのか、それとも無視してるだけなのか、いくらコールしても電話はいっこうにつながらない。
「あたし、行くからっ」
「行くって、どこに?」
「決まってんじゃん、おにーちゃんのとこだよっ。行って、首に縄つけてでも、おやっさんの前に連れてきてやるんだからっ」