恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「四の五の言わずにオレのいうことを聞け」
だけど、あくまでおにーちゃんは強引だった。
「いいか? 逆上がりがうまくできねぇ最大の理由は腕が伸びきっていて鉄棒からカラダが離れていることにある」
「そっか…!」
おにーちゃんに言われてハッとした。
実際、あたしの手が伸びきっていたからだ。
「俺が背中で押し上げてやっから、お前は腕にチカラを入れて、ヒジをしっかり曲げてカラダを鉄棒にくっつけるんだ。いいな?」
そう言うと、おにーちゃんの背中が、あたしの背中をグングン下から押し上げはじめた。
おかげで腕力のないあたしでも手にチカラを入れることができて、ヒジを曲げピッタリと脇に付け、そしてカラダを鉄棒にくっつけることができた。
「く、くっつけたよ、おにーちゃんっ」
「おしっ。そしたら鉄棒にしがみついたまま、今度は足を頭の上に上げるんだ」
「こうっ?」
言われるまま、勢いもなく、ゆっくりだったけど、足を頭の上に持っていくと、足の重みのせいかグランと足のほうから自然と下に落ちていく感じで、いともたやすく鉄棒を軸にしてカラダがクルンと回転した。