恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
あくまでも、あたしの言うことを信じようとしないおにーちゃん。


だけど考えてみれば、むしろそのほうがフツーなのかもしれない。

だって、ついこないだ「カレシくらいいるよっ」っておにーちゃんの前で堂々と言い放ったばかりだし、それから何日もしないうちに「別れた」なんて言われて信じるほうがむしろフツーじゃないと思う。


「なんだ……カレシがいたのか……」

分かりやす過ぎるほどの大将のガッカリと落胆した表情だった。

「う、ウソなんかじゃないですっ。あたし、いま本当にカレシいないんですっ。だから本気で結婚してもいいと思ってるんですっ」

慌てまくってあたしは言った。

だけど、おやっさんは……、

「ありがとうよ、桃ちゃん。ワシを安心させようと思ってくれた、そのやさしい気持ちだけで、もうじゅうぶんだ」

……と、あたしにやさしい目を向ける。

「ウソじゃないよっ、ホントなんだっ」

「分かったから、もうよせ」

おにーちゃんはそう言うけど、全然なにも分かってない。

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