恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

もしかしてあたし“オオカミ少年”みたい?

小さいころ聞いた外国の童話に、いつも「オオカミが来たぞーっ」ってみんなにウソばっかしついてたから、やがて本当にオオカミが来たときに誰にも信じてもらえなかった少年のお話がある。

あたしも「カレシがいる」なんてウソばっかしついてたから、おにーちゃんに信じてもらえなかったのかも……。


「本当にもういいよ、桃ちゃん」

そして大将も、あたしの言うことを信じてくれていない。

「その話がダメならダメで、次の話はある」

「つ、次の話……? なんですか、ソレ?」

そう尋ねたあたしに対する大将からの返事は、まったく想像もつかないものだった。



「ウチの娘をヒデ坊と見合いさせるんだよ」



「た、大将の娘さんと!?」



あたしも大将の娘のことはよく知っている。

……ってゆーか浅草で、大将の娘のことを知らないヒトはいないと思う。
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