恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

「おにーちゃん、回ったよっ」

そのときには、おにーちゃんはもうあたしの下から出てきていた。


「あとは上体を起こせばOKだ」

「で、できないよぅ……」

あたしのカラダはまるで物干し竿にぶら下げられた蒲団のように、鉄棒をあいだにはさんだ二つ折り状態でユラユラしていた。


「勢いをつけて、しっかり足を下に振り下ろすんだ。そうすりゃ反動で頭が起き上がる」

実際はクチで言うほど簡単じゃなかった。

けど、それでも何度かユラユラしているうちに、ふとしたはずみで上体が起き上がった。


「で、できたーっ♪ できたっ、できたよっ、おにーちゃんっ♪」


そのとき、あたしは周囲の目も忘れて、めちゃくちゃコーフンしまくっていた。まわりのことなんて、もうどーでもよかった。

「どーだ? はじめて逆上がりができた感想は? 今まで見たことのない景色が広がる感じだろ?」

「う、うん♪ こーいう感じなんだァ♪ 逆上がりができたときの感覚って♪」




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