恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「ぴ、ぴ、ピンクっ!? どうしてお前、こんなとこにっ!?」
予期せぬあたしの乱入に、まるで浅草寺(せんそうじ)の境内のハトが豆鉄砲でもくらったように、目をまん丸くしているおにーちゃん。
「あたしという許婚がいながら、他のオンナとなにやってんのよっ!? あたしと結婚するって言ったのはウソっ!? 結婚詐欺っ!? アンタ、あたしのことダマしたのっ!?」
われながら迫真の演技だと思う。
「お前、化粧なんかしてどうしたんだよ? それになんだよ、そのカッコ?」
おにーちゃんがあたしのカッコを見て驚くのも無理はない。
ギャル系のキャバ嬢というキャラ設定で、母の化粧品を黙って借りて超ドぎつい派手×2なメイクをしたうえに、服は碧から借りた胸の谷間もあらわな小悪魔系キャミと、ちょっと前かがみになっただけでパンツが丸見えになりそうなほど丈の短い超×2ミニスカ姿だったからだ。
「“なんだよ”って、アンタ、3度のメシより好きでしょ? ミニスカが♪」
あたしはおにーちゃんの胸倉から手を離して、スカートの左右の端を手でつまむとカクンと膝を曲げて、古い洋画のお嬢さまがするようなあいさつのポーズを決めてみせた。
「そ、そりゃ、そーだがっ……」