恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「それに、もしアイツらがお前になにかしてきたら、守ってやるから心配するな」

「でもっ……」

……と、あたしが言い返そうとしたとき、隅田川の川面を吹く風が突然まるでつむじ風のように、ひと際強く激しく吹いた。それは水上バスが浅草から出発してから約30分後、浜離宮に近づきつつあるときのことだった。


ピュウゥゥゥ~ッ


とたんに、まるで雨の日にパッと開いた傘の花のように、あたしのミニスカが地球の引力に逆らって前後左右に満開になる。

「キャッ」と慌てて前を押さえるけど、お尻のほうはスカートの中身が丸見えで、近くにいた観光客らしき熟年カップルのおじさんのほうが“ええもん見させてもろうたわぁ~”みたいな顔をしてるのが分かった。

当然ミニスカフェチのおにーちゃんだって、エッチなつむじ風のイタズラに大喜びしてるんだと思った。

けど、そうじゃなかった。


「お前、そんなカッコで人前に出るなっ」


そう言ってスーツの上着を脱ぐと、ふうっと肩から掛けてくれるおにーちゃん。カラダの大きいおにーちゃんのスーツをあたしが着るとぶっかぶかで、ヒラヒラとはためくミニスカを上からスッポリと覆い隠してしまう。
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