恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
次の瞬間、さっきまでハッキリと見えていたおにーちゃんの顔がにじんで見えたのは、あたしの瞳に涙が浮かんできたからだった。
そーいえば、おにーちゃん、ミニスカフェチのクセに、白鳥さんと付き合いはじめた途端、しきりと彼女にミニスカを履くのを辞めるように言ってた、ってことだけど……。
それも、もしかして、おにーちゃんが白鳥さんのことを大切に思っていたからこそ、人前で肌をさらしてほしくなかった、ってことなんじゃないかな?
うん、きっとそうだよ。
「大根足のクセしてミニスカで人前に出るな」
……なんて言ったっていうのも、きっと照れ臭くて、ワザとそんなふうに言ったんじゃないか、ってあたしにはそう思えてならない。
白鳥さんは、おにーちゃんのことを、乙女心を傷つけるデリカシーのない男だと思って別れたみたいだけど、もしもおにーちゃんの発言の裏側に隠された真意を知っていたら、もしかしてふたりは今も付き合っていたかもしれないとも思う。
「あ、あなた、もしかしてお茶屋さんちの桃ちゃん? 小さい頃、ウチの弟たちによくいじめられて泣いてた女のコが、少し見ないうちにすっかりオトナっぽくなってるから、わたし、今まで全然気がつきませんでした」