恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
このくちぶりからすると、やまぶきさんは小っちゃい頃のあたしを知っているみたい。
「ね? 赤井氏、いまの聞いた? “オトナっぽくなった”って」
思いがけないやまぶきさんの言葉に、すっかり舞い上がってしまっているあたし。
「お世辞だ、お世辞。真に受けてんじゃねーよ、このタコスケが」
「そんなことないよっ」
ムッとするあたし。
「そっか……そうなんですね♪ なァんだ、さっき彼女が急に出てきて赤井さんのこと“結婚詐欺”とか言うから、かなり動揺してしまったんですけど、彼女が赤井さんの妹分なら、ちょっと一安心って感じです♪」
やまぶきさんの顔に、安堵の表情が浮かんでいた。
「コイツとオレが許婚の関係だというのはウソじゃねぇが、いまコイツには付き合ってるオトコがいるから、やまぶきちゃんは気にしねぇで今回のオレとの縁談のことを真剣に考えてもらいてぇんだが……」
「ハイ、分かりました♪」
「………」
“ハイ、分かりました”ってこのヒト、おにーちゃんとのことを本気で考えようとしてるってコト?