恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~


「オイ。ピンク。お前、やまぶきちゃんに謝れよ。お前がミョ~なことするから、彼女、ビビッちまったろうが」

「“ミョ~なこと”って、あたしはただ……」

「いいんですよ、桃ちゃん。お兄さんみたいに慕ってる赤井さんが他の女性に盗られると思って、それでこんなことしたんですよね? わたし、分かるような気がします」

「そうだけど……そうじゃないんですっ」


今のキモチをうまく表現できないもどかしさにイラついたあたしは、逃げ出すようにしてふたりの前から去った。肩に、おにーちゃんのスーツの上着を羽織ったままで……。

そして逃げ場のない水上バスの上から、1秒でも早く降りてしまいたい気持ちでイライラしながら下唇をかみしめた。



      ×      ×      ×



後日、あたしの耳によくない知らせが入ってきた。

おにーちゃんとやまぶきさんが、結婚を前提にして正式に付き合いはじめたというんだ。

それは病院にお見舞いに言ったとき、彼の父親であるおやっさんから聞いた話だ。

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