恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

「注文してから何時間も待たせたあげく、ようやく頼んだもんが出来たと思ったら、目の前で他のテーブルに持っていきやがるっ。コレ、どぅ考えてもおかしくねっ!?」

「“何時間も待たせた”なんて……」

たしかに今日はお客さんが多くて、いつもより若干お待たせ気味だけど「何時間も待たせた」っていうのはさすがに大袈裟すぎる。

「テ前ぇ、客に向かって口答えすんかよっ。俺らはテ前ぇらにカネ払うんだぜっ。テ前ぇらにとっちゃ、ありがたぁいお客様のはずだぜっ。分かってんのかよっ、オイッ!」

「も、申し訳ありませんっ……」

髪を振り乱して頭を下げるあたし。

とにかくここは謝るしかない。

実際、ミスをしたのはあたしなんだし。


それにしても……ときどき料理の中に髪の毛が入ってたとか言ってクレームをつける、いわゆる“クレーマー”のお客さんというのはいるもんだけど、今回のクレーマーはちょっと……いや、かなりタチが悪いと思う。

でも、このヒトにしてみれば、せっかくカノジョをデートに誘って遊園地に来たのに、注文した物を他のテーブルに持っていかれたもんだから、カノジョのためにソレを取り返して、カノジョにいいところを見せようとしていただけのかもしれないけどね。


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