恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「そうか。テ前ぇの教育がなってねぇから、メイドがこんなつまらねぇミスをやらかすんだろーが?」
「まことにおっしゃるとおりでございます。今後はこのようなことがないよう、厳しく教育していく所存でございます」
「“今後は”って、テ前ぇ。ちゃんと教育もできてねぇメイドに出てこられたんじゃ、迷惑するのは客のほうだ。ココにくるのは今回限りだ。今後一切ココには来ねぇよ」
そう言うと、ロンゲの男は土下座をしている紫苑さんの頭の上から、コップの水をタラリとかけた……うすら笑いを浮かべた顔で。
「し、紫苑さん……」
いくらココのカフェの責任者とはいえ、社長御曹司の彼が、ミスをしたあたしの代わりに陰険なクレーマーの前で土下座をさせられているのかと思うと激しく胸が痛んだ。
結局、ロンゲのクレーマーは“すぐに新しいホットドックを持ってくる”と言っても、“代金はいただかない”と言っても、“遊園地のタダ券をさしあげる”と言っても、一切その言葉に耳を貸そうとしないまま、早々にカフェから立ち去ってしまった。
× × ×
「桃香ちゃん、怖かったでしょ? ボクもホントは怖かったんだよねぇ」
「まことにおっしゃるとおりでございます。今後はこのようなことがないよう、厳しく教育していく所存でございます」
「“今後は”って、テ前ぇ。ちゃんと教育もできてねぇメイドに出てこられたんじゃ、迷惑するのは客のほうだ。ココにくるのは今回限りだ。今後一切ココには来ねぇよ」
そう言うと、ロンゲの男は土下座をしている紫苑さんの頭の上から、コップの水をタラリとかけた……うすら笑いを浮かべた顔で。
「し、紫苑さん……」
いくらココのカフェの責任者とはいえ、社長御曹司の彼が、ミスをしたあたしの代わりに陰険なクレーマーの前で土下座をさせられているのかと思うと激しく胸が痛んだ。
結局、ロンゲのクレーマーは“すぐに新しいホットドックを持ってくる”と言っても、“代金はいただかない”と言っても、“遊園地のタダ券をさしあげる”と言っても、一切その言葉に耳を貸そうとしないまま、早々にカフェから立ち去ってしまった。
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「桃香ちゃん、怖かったでしょ? ボクもホントは怖かったんだよねぇ」