恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「そうですか……」


“ヒトのクチに戸は建てられない”っていうけど、相手がおしゃべりな黄ぃちゃんなら、なおのことか。


「こないだセンパイと話してるときに言ってたけど、たしか同じ高校の男(ヒト)と付き合ってるんだよね?」

「あ……それ、ウソなんです……」

そのときなぜか、自分でも意外なほどにウソだと認めているあたしがいた。

「え?」

「赤井氏にバカにされたくなくて、あのときは“カレシがいる”なんて言いましたけど、コクッた瞬間フラれちゃって……だからホントはカレシなんていないんです……」


このことはおにーちゃんも知らないし、なかよしの碧も知らない。

まぁ、カミングアウトしたのは今回がはじめてだから、誰も知らなくて当然だけど……。


「じゃあ、アレかな? カレシができない悩みとか?」

「まぁ、そんなところです……」


やまぶきさんと婚約してしまった以上、おにーちゃんをカレシにすることはできない。
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