恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「あたし、“指きりげんまん”なんかしないからねっ」
「なんで?」
「だって、いい歳して恥ずかしいじゃん」
たしかにソレも理由であることに間違いないんだけど、そんなことよりもっと大きな理由がある。
本当は今でもおにーちゃんが好きなのに、ほかの男のヒトと幸せに生きていくことを約束するなんてできなかったからだ。
「じゃあ、げんまんはしなくていいや。しなくてもいいが、とにかくちゃんとお前も幸せになれよ。約束だからな」
そう言って、歩きはじめるおにーちゃん。
「………」
そんな約束は守れない。
守れない約束なんてするつもりはない。
だからあたしは返事もせずに黙ったまま、おにーちゃんのあとに続いて歩き出した。
そして歩きながら、こう思った……、
“幸せになれって言うんなら、こんなふうに一緒にいられるだけでじゅうぶん幸せだよ”
……って――――――