恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
Act.1 「ヒーローに恋して」
その日は朝から青だった。


……といっても空の色のことじゃない。


母親にユサユサ揺らされ起こされて、寝ぼけまなこで目覚まし時計を見た瞬間、あたしの顔が真っ青になったんだ。



「行ってきまふっ」



まるでアニメの学園モノみたく、食パンをくわえて家を飛び出したあたしは、中学校という名のゴールを目指して長距離走のスタートを切った。

日本を代表する観光スポット・東京都台東区は浅草の町が、あたしの走るグラウンド。


「グッモーニン、ミス・桃(ピーチ)♪ 今朝モマタ、オ寝坊サンカイ? 急ガナイト、マタ学校ニ遅刻シチャウヨ」

仲見世を抜け、ちょうど雷門をくぐったところで、米々亭(まいまいてい)グレイ師匠がおせっかいな言葉をかけてくる。

師匠はアメリカ出身の落語家で寄席にも出ているヘンな外国人。


「ぐっども~にんぐ、師匠っ。でもね、あたし寝坊はしても、今まで一度も遅刻したことってないんだよねっ。じゃっ」

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