恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「もちろん裁判はあるよ。でもね、これだけ大勢の目の前で、紫苑くんのことをボッコボコにしたんだ。“容疑”どころか“現行犯”じゃん。執行猶予は付くかもしれないけど、傷害罪での実刑判決はアリなんじゃないかな……」
白鳥さんはこれから紫苑さんと結婚するヒトだから、彼の肩を持つのは当然だ。
だけど、元カレであるはずのおにーちゃんのことを、こうも淡々と語られるのは、あまり気持ちがいいものじゃない。
「でも、あたしのココロを傷つけた紫苑さんに対して、怒りの鉄拳をふるったわけだし……情状酌量っていうのかな? そーいうのってないんですか?」
「例えば、目の前で紫苑くんに乱暴されそうになってる桃ちゃんを助けるために暴力をふるったっていうんなら、情状酌量もあるかもしれないけど、あの場面で紫苑くんは桃ちゃんに対して指一本触れていないんだし……結局、英雄くんが無抵抗の相手を一方的に殴ったっていう客観的な事実についての審議しかされないと思う」
「そんなっ……」
「でも裁判って、そーいうものなんデスよネ。基本的に感情の入り込む余地なんてなくて、過去に起きた同様の事件と照らし合わせて、被疑者に対する処分をシステマチックに決めていくだけの形式的なものなんだって、ウチ、紫苑さんに聞いたことありマス」