恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「ハイ。それに、いろんなところに連れてってもらったり、美味しいもの食べさせてもらったり、あと欲しいものもいっぱい買ってもらいマシタから、ウチはもうじゅうぶん幸せデス。それだけのことをしてもらったんだから、お礼に寝てあげるくらい安いもんじゃないデスカ」
「……だ、そうよ」
そう言ったときの白鳥さんの顔が、やけに大人びて見えた。
彼女もまた紫苑さんがプレイボーイなのをよく知っている。それを承知で結婚しようとしてるんだから、彼のオンナぐせの悪さをいさめるつもりなんてハナからないんだろう。
もしかして、彼のオンナぐせについては、あえて見て見ぬフリをして、財産目当てで玉の腰に乗ろうとしているだけなのかも。
「みんなは紫苑くんのことを“メリーヒルズの光源氏”とか言ってるけど、彼は、ただ愛に飢えてるだけなんだよ。小さい頃に交通事故でおかーさんを亡くしてるから、母性ってゆーか……女性の愛に飢えてるんだよ」
そっか。そこが年上の白鳥さんの母性本能をくすぐった、ってことか。
そしてプレイボーイであると同時に、マザコンのケがある紫苑さんとの需要と供給がうまくマッチングしたってことなんだと思う。