恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

「あのぅ、話の流れとカンケーないこと言って申し訳ないですケド……なんかコレって、いま話題の“裁判員制度”みたいデスネ」


裁判員制度とは、法律とはまったくカンケーのない一般のヒトたちが陪審員のように、さまざまな事件の裁判に参加するという新しい制度のことだ。

法律の専門家の意見だけでなく、素人さんたちの意見を取り入れることによって、以前なら“無罪”とされていた事件が“有罪”となることや、その逆の判決になる可能性だって、じゅうぶんあり得るといわれている。


「そうだね、言われてみれば、黄ぃちゃんのいうとおりだね」

白鳥さんはそう言うけど、もし今あたしたちがやってるのが裁判員制度のもとでの話し合いだとしたら、あたし以外、おにーちゃんの弁護をするヒトは誰もいないことになる。

みんな昨夜はあんなにおにーちゃんとの別れを惜しんでいたはずなのに、一晩明けたら味方はひとりもいなくなってるなんて……。


いや、違う。

もうひとり、おにーちゃんの味方になってくれるヒトがいる。

やまぶきさん。

婚約者のやまぶきさんなら、ゼッタイおにーちゃんの味方になってくれるはず。
< 212 / 263 >

この作品をシェア

pagetop