恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「ちょっとゴメン……」
そう言って、席をはずしたあたしはケータイでやまぶきさんに電話を入れた。
「もしもし、やまぶきさん?」
つながった電話の向こうから彼女の返事はなく、ただヒックヒックという嗚咽だけが聞こえてくる。
想像するに、すでに彼女もおにーちゃんが捕まったことを知っていて、そして彼女もケーサツのヒトから昨夜のことについて話を聞かれたんだろうと思う。
「やまぶきさん……」
白鳥さんや黄ぃちゃんたちと違っては、彼女ならおにーちゃんの味方になってくれると信じてる。だから、やさしく言葉をかけた。
「赤井氏、これからたいへんなことになるかもしれないけど……そこは婚約者のやまぶきさんが彼のココロの支えになってあげてくださいね……」
できることなら、あたしが彼女の代わりにその役をつとめたかった。
でも、あたしはそーいう立場の人間じゃない。くやしいけど……。
それができるのは、やまぶきさんただひとりだけだ。
「赤井氏のこと、お願いします」