恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
小っちゃい頃から大好きだったおにーちゃんを彼女に託すキモチで、しみじみと語りかけるようにしてお願いするあたしだった。



だけど……、



だけど彼女のリアクションは、あたしにとってまったく想定外のものだった。



「そ、それは……それはできません……」



ケータイの向こうから聞こえてきた声は、蚊の鳴くほどのすっごく小っちゃな、涙交じりの震える声だったけど、でもソレは聞き間違いなんかじゃない。

「“できない”って、どうして? どうしてですか?!」

「お父さんとも話し合って……今回のお話はなかったことにしたからです……」

「こ、婚約を解消するってことですか?!」

「お父さん、言ってました……“警察沙汰を起こすような男に、大事な娘はやれない。もしこのまま結婚なんかさせたら、今度は家庭の中で、妻に対して手をあげることになるかもしれないからな”……って」

「赤井氏はDV(ドメスティックヴァイオレンス)をするようなヒトじゃありませんっ」
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