恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

それだけ言うと、一方的に電話を切ってしまうやまぶきさん。


“おにーちゃんとやまぶきさんとの縁談がダメになった”

そのことは本来あたしにとっては喜ぶべきことなんだけど、あとで婚約解消になったと聞かされておにーちゃんがどれだけショックを受けるかと思うと、素直に喜べない気持ちのほうが大きかった。


「………」


しばし呆然としながらも、気を撮り直して、今度は紫苑さんに電話をするあたし。

その胸の中には……、

“もう、こーなったらおにーちゃんを助けてあげられるのは、世界中にあたしひとりしかいないんだ!”

……という思いがあった。

電話に出た彼に今どこにいるのか尋ねると、さっきケーサツから帰ってきたところだという返事が返ってきた。


パタンと握り締めるようにしてケータイを閉じると、その足でイッキにダッシュ。もちろんカフェの制服姿のままだ。

行く先は、東京メリーヒルズ内に建つ管理施設兼オフィスとなっているビル。
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