恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「どう責任を取るというのだね?」
クチではそう言ってるけど、さして興味もなさそうな顔だった。
「お金で解決するつもりはないですけど、刑事告発取り下げの示談金に、ケガの治療費と慰謝料をあたしが全額お支払いします」
「見たところ、キミはまだ高校生くらいじゃないのか? キミにそんなカネが払えるというのかね?」
「もちろん、今もらってるバイト代くらいじゃ払えないのは分かってます。だから高校を辞めて、社長のお屋敷でメイドとして雇ってもらいたいと思っています。あたし、一生懸命働きますから、働いたぶんのお金を示談金とかに充ててください」
「それはまたずいぶんとキミにとって都合のいい話だな。だが、あいにくメイドはまにあってるんでね。今のところ追加で雇うつもりはないよ」
「そんな……」
そのとき社長室のガラス窓に、ピチャピチャと何か液体のようなものが当たる音がした。
見ると、窓の外にはついに雨が降り出していて、風に吹かれた雨の雫が斜めに降って、ガラス窓に叩き付けられていたんだ。
「勘違いしないでもらいたいんだが、私は別にカネが欲しいわけじゃない。罪を犯した者に対して、正当な罰を与えたいだけだ」