恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

ただでさえ大金持ちの社長相手に、金銭の話をしたところで、交渉材料にはならないってことか。


「じゃあ、あたし、社長のためになんでもします! なんでも言うこと聞きますから! だから、お願いします! おにーちゃんを許してあげてください!!」


こーなったら、もうお願いするしかない。

ただひたすらお願いするしかない。


「おにーちゃんをワルモノにしないでください! おにーちゃんを刑務所に入れないでください!! おにーちゃんを、あたしから奪わないでください!!!」

「き、キミ……」

露骨に迷惑そうな顔をする社長。

「あたし、小さい頃からいつもおにーちゃんに助けてもらってました! だから、おにーちゃんがいないとダメなんです!」

「そんなこと言ってもだねぇ……キミたち、そのコにはお引取り願いなさい」

秘書風の年増の女のヒトと、受付嬢に向かって命じる社長。

「か、かしこましました、社長!」

命じられるまま、ふたりがかりで、社長室からつまみ出しにかかるふたり。
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