恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「もしも! もしも、いま降ってる雨が一生やまなくてもヘーキです!! 今夜、太陽が沈んだっきり、二度と朝がこなくてもいいんです!!! でも、おにーちゃんがいないとダメなんです!!!! それだけは、あたしダメなんです!!!!! あたし、おにーちゃんが大好きなんです!!!!!!」
「分かった、分かった」
まるで相手にしていない感じの社長。
「一生のお願いです! おにーちゃんのこと、どうか許してあげてください!! お願いします!!! お願いします!!!!」
そう叫ぶと、両脇から捕まえているふたりの女のヒトの手を振りほどき、その場に土下座をしようとするあたし。
……と、そのとき!
「その土下座待ったァーっ!」
不意に聞こえた若い男のヒトの声にびっくりして振り向くと、社長室の入り口に社長の子供――つまり紫苑さんが立っていた。
「し、紫苑さん!?」
「土下座はボクの仕事だよ、桃香ちゃん♪」
その瞳がとてもやさしかった。