恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
顔じゅうアチコチに、バンソウコウを貼ってはいたけど……。
「ボクからも頼むよ、パパ。センパイの刑事告発を取り下げてほしい。頼む、このとおりだから」
そう言うと、なんの躊躇もなくその場に土下座をする紫苑さん。
「こ、光一っ……お前っ……」
さっきまで、どこか相手を見下すような態度をとっていた社長が、思いっきり取り乱し、椅子から立ち上がると、土下座をする紫苑さんの傍らへと慌てて駆け寄る。
「パパがボクのことを心配してくれる気持ちは分かるけど、今回のことは“おあいこ”だと思ってほしいよ」
「おあいこ?」
「たしかにボクはセンパイにケガをさせられた。でもボクだって前に、センパイにケガをさせてるんだから」
「それはそうだが……」
「それにさぁ、センパイは右目を失明させられても怒らなかったのに、ただ殴られただけのボクがケーサツという国家権力まで動かしたとなると、“紫苑光一はどんだけ器の小っちゃいオトコなの?”ってことになるよ」
「………」