恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~

「だいいち、もし裁判になんかなったら、それこそボクのこれまでの女性遍歴がみんなの前でバレバレになって、ボクだけじゃなくパパだって恥じをさらすことになるよ」

「う~ん……」と、まるで工事現場のブルドーザーのような低い声でうなる社長。

「だから……だから今すぐ刑事告発は取り下げようよ、ね、パパ」

「う~ん……」

再びうなると目を閉じて、しばらく考え込んでいた社長だけど、ややあって……、



「分かった……光一、お前のいうとおりにしよう」



どこか納得いってないふうにも見えなくはないけど、とにかく社長はそう言ってくれた。

「じゃ、じゃあ、これでおにーちゃんは!!」

「被害者が存在しなくなる以上、必然的に被疑者も存在しなくなる。センパイは釈放されるよ」

そう言って立ち上がる紫苑さん。そして遅れて社長も立ち上がる。

「あ、ありがとうございますっ。紫苑さん、社長さんっ。本当に、本当にありがとうございますっ」

< 226 / 263 >

この作品をシェア

pagetop