恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~


おにーちゃんにしてみれば、きっと何げにクチにした発言だったんだろうけど、あたしにしてみれば、どんな有名芸能人のスキャンダルさえ比べ物にならないくらいの衝撃を持って耳に流れ込んでくるスキャンダルだった。


「あ、赤井氏……カノジョいたんだ……?」

「いるぜ。白鳥(しらとり)ってんだ。バイト先の遊園地で知り合ったオンナだ。いまオレといっしょのアトラクションに出てる」

「………」


この町を離れて、あたしの知らないところで暮らしているうちに、おにーちゃんはあたしの知らないおにーちゃんになってた、ってことか……。


「そっか……大学行ってカノジョつくって、あとは教員免許さえ取れば、将来は学校の先生として生きていける幸せな未来が待ってるわけだ♪ よかったね、赤井氏♪ ソノ白鳥さんって女性(ヒト)とお幸せにね♪」

ひきつった笑顔でそれだけ言うと、あたしは家の中へと駆け込んだ。


バイハイ、おにーちゃん……、

バイハイ、あたしの初恋……。



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