恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「よぉ、ピンク♪」
「……って!」
あたしのほうから声をかけようと思ったのに、先におにーちゃんに気づかれてしまった。
なんか悔しい。
異常に悔しいっ。
「“ピンク”なんて女はどこにもいないよっ」
腹が立ったあたしは、わざとぶっきらぼうな感じでそう言った。
「じゃあ、桃ちゃん」
「“桃ちゃん”もいないっ」
「なら、なんて呼びゃあいーんだよ」
「そうさねぇ、“小股の切れ上がったイイ女”とでも呼んでもらおっかなァ♪」
「はいはい、分かった分かった。でっ、その“小股の切れ上がったイイ女”が、こんなドシャ降りの雨の夜にケーサツまでなんの用だ? 悪いことでもして自首しに来たか?」