恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~


「よぉ、ピンク♪」


「……って!」


あたしのほうから声をかけようと思ったのに、先におにーちゃんに気づかれてしまった。

なんか悔しい。

異常に悔しいっ。


「“ピンク”なんて女はどこにもいないよっ」


腹が立ったあたしは、わざとぶっきらぼうな感じでそう言った。


「じゃあ、桃ちゃん」


「“桃ちゃん”もいないっ」


「なら、なんて呼びゃあいーんだよ」


「そうさねぇ、“小股の切れ上がったイイ女”とでも呼んでもらおっかなァ♪」


「はいはい、分かった分かった。でっ、その“小股の切れ上がったイイ女”が、こんなドシャ降りの雨の夜にケーサツまでなんの用だ? 悪いことでもして自首しに来たか?」
< 241 / 263 >

この作品をシェア

pagetop